第19章 繊細な美
隊士1「ふ、副長…そろそろ…休憩時間にしませんか」
延々と竹刀を降り続けた隊士の一人が、鬼の副長様の機嫌を窺いながらそっと声を上げた。
土方「あ?休憩だァ?甘ったれたこと言ってんじゃねぇよ。士道不覚悟で切腹させんぞコラ」
そんな悲痛の叫びを鬼は無情にも切り捨てる。
けれどその叫びは他の隊士達にも当てはまったようで…
隊士2「いや、でも…もうとっくに今日の稽古の時間過ぎてんじゃないすか」
隊士3「休憩なしで2時間はちょっとスパルタ過ぎって言うか…」
隊士4「それにそろそろ局長が戻って来る時間だし今日はこの辺でお開きってことで…」
我も我もと振り上げていた竹刀を下ろし、矢継ぎ早に鬼を説得しにかかる。
『うわ、芋蔓式』
少し離れたここから見ると色んな意味で圧巻だ。
まあでも、休憩無しで2時間は流石に…
土方さんもそこまで鬼じゃない…
土方「てめェら全員切腹しろ」
鬼だったかぁ…
前髪V字の鬼だったかぁ…
前々から変な前髪だなぁと思ってはいたけどアレ多分角の名残かなんかだよね。
そうだよね。
隊士s「!!」
表情の凍りついた隊士達を一瞥した土方さんは更に続ける。
土方「ったく…俺達真選組が戦うべき相手は誰だ。まず第一に攘夷浪士だろう。攘夷浪士にゃ過激派なんて大層な名前で呼ばれてる奴らがいる。桂然り高杉然りだ」
隊士s「…っ」
"過激派"
その単語を耳にした途端、鬱々としていた隊士達の表情が引き締まった。