第19章 繊細な美
山崎「あ、用があるんでしたよね。副長なら今頃道場で稽古つけてますよ。俺も今から向かうところだったんで案内します」
『ほんと!?ありがとう!』
山崎「沖田隊長が送ってくれても良かったと思いますけどね…」
『…』
山崎「?どうかしました?」
『んーん、何でもないよ』
山崎「そうですか」
先を歩くジミーに笑って見せると、特に気にした様子もなく、すぐに前に向き直った。
良かった…
ちゃんと笑えてたみたい。
山崎「にしてもさくらさん、随分遠くまで来ましたね」
『え?』
転んだはずみにズレたのか、はたまた蹴り飛ばされた時なのか、少し位置のズレている帯刀を直しながら柔らかく笑うジミー。
山崎「だって、道場ってアンタが行こうとしてた方向と真逆ですよ」
『マジでか』
確かに…ジミーとぶつかる前、進路変更をした方向とは逆に歩いてる。
マジかよー…道理でどこまで進んでも着かないわけだ。
山崎「ほら、ここです」
そう言ってジミーが指差す先には、竹刀がぶつかり合う軽快な音と男くさい声が木霊する木造の建物があった。
『ここが道場…』
なんか高校の部活思い出すよなぁ。
こう見えて高校時代は剣道部ですよ私。
女主将ですよ。
え、今更取ってつけたような設定足すなって?
前からありましたから!
……
前からありました!
てか、あれ…?
『…ジミーさ、ここまで案内してくれて助かったけど、遅れて行って大丈夫なの?怒られちゃったりしない?』
山崎「あー…本当は士道不覚悟で切腹なんですけど…」
言いながらジミーが道場の戸を開く。
山崎「今日はお土産があるんで多分許してもらえると思います」