第19章 繊細な美
『いてててて…』
ビックリした…
もし私がここで高校の制服着て食パンくわえてたもんなら完璧に一昔前の王道少女漫画のヒロインだったよ。
「スイマセン!怪我は…」
慌てた台詞と共に、少し高めの声の主がしりもちをついた私を助け起こしてくれる。
うわ、ホントにベタな漫画の中みたい…
『大丈夫です…こっちこそすいません…って』
「?」
『山崎退!?』
マジかー…ジミーの初登場がここかー…
山崎「え、何で俺の名前…ていうか君誰?何でここに?」
疑うような視線を向けるジミー。
あ、でもそうか。
傍から見たら私はただの不法侵入者だ。
『あ、土方さんに用があって来ました。小鳥遊さくらといいます。総悟…沖田さんに奥に行けば会えると言われて来たんですけど…』
山崎「ああ!さくらさんってあの!?」
『…え、あの?』
途端に態度を変え、キラキラとした瞳で見つめてくるジミー。
あの…って、私何かしたっけ?
山崎「副長と沖田隊長に惚れ込まれたっていうあの…!」
『ヘェェェイ!ジミーシャラァァァップ!』
山崎「アパァァァ!」
思わずライダーキックを一撃お見舞いする。
『黙ろうかジミー。ねぇジミー?』
山崎「はっはいィィィ!」
ほとんど初対面の女に突然ライダーキックをかまされたジミーは廊下に横たわったまま両手で顔を覆ってさめざめと泣いている。
山崎「何で俺の周りの人はすぐに手が出るかなぁ…俺の人権どこに落としてきたんだろう…警察に紛失届け出そうかな…あ、警察ここか」
力関係が確立した瞬間だった。
『さてジミー、聞きたいことがあるんだ』
山崎「な…何でしょうか…」
スンスンと鼻をすするジミーに聞く。
『土方さんってどこにいるのかな?』