第3章 背中を見せたらいけない相手
『あの…』
総悟の脇腹をつつく。
沖田「…」
総悟は白目をむいたままピクリともしない。
『え、大丈夫ですか…?』
沖田「…」
『土方さん』
煙草をふかしながらこちらを眺めていた土方さんへ向き直り、
『私が殺りました』
両手首を合わせて土方さんへと差し出す。
それを見た土方さんは、ため息混じりに煙を吐き出し、総悟の頬をペチペチと叩いた。
土方「オイ総悟、ふざけんのはシメーだ」
その途端、今の今まで白目をむいていた総悟 がむくりと起き上がった。
沖田「なんだもう終わりですかィ?」
『な…っ』
沖田「お、この反応だと大分信じてたみたいですねィ」
絶句する私を見てケタケタと楽しそうに笑う総悟
『ふざっけんなオイお前ぇぇ!』
沖田「まあまあ、そうカリカリしねーで」
『うるせぇぇこのチンピラチワワが!』
土方「はいそこまで」
見かねた土方さんが道のど真ん中で喧嘩を始めたポリ公と見知らぬ女の間に入る。
土方「で?お前は何か俺らに聞きてぇことがあったんじゃねぇのか?」
『あ、そうなんですよ』
危ない危ない。
総悟のせいで大事なこと忘れるところだった。
『あの、私この町に来たの初めてなんです。万事屋までの道を教えて欲しいんですけど…』
沖田「万事屋ってーと、こっからだいぶ離れてやすね」
土方「歩いていけばせいぜい30分はかかるな」
『え…』
マジか…流石にそれはめんどくさいなぁ
土方「総悟、パトカー出せ」
沖田「へーい」
あまりの距離に絶望して項垂れると、土方さんが総悟に指示をした。
『え…。やっぱり殺人未遂とかで逮捕ですか』
土方「いや、それはもういい。俺らも万事屋に用があんだ。ついでに送ってやらぁ」
『え、いいんですか?』
イヤッホォォォ!
土方さんと一緒に車乗れるとか生きててよかった!
土方「てことで総悟、頼んだ」
沖田「へい」
そう言うと私達を取り残して去っていく土方さん。
『え、あれ、土方さんは…』
沖田「土方さんは偉い人に呼ばれてるんでィ。万事屋に用があるのは俺だけでさァ」
まさか、そんな…
『てことは私は総悟と…?』
沖田「なんでィ、嬉しいか?」
総悟は私を一瞥すると不敵に口の端をつり上げる。
私はそのムカつく野郎にボディーブローをかけて一言。
『最悪じゃボケェェェ!』