第17章 夢幻
何!何だ!
"私、出ちゃうかも~"
まさか…
いや、いやいやいや!有り得ないから!
重心を下げ、いつ何時何があっても相手を殴り倒せるように準備をする。
銀時「…あり?」
ゆっくりと辺りを見渡すと、そこは見慣れた部屋の前だった。
銀時「…!オイ!」
襖を開け放って部屋へ入る。
『!?』
すると、部屋の主…さくらが布団から起き上がった状態で目を見張った。
銀時「大丈夫か!?」
『…?』
怪訝そうに眉をひそめるさくら。
あら…何ともないわけ…?
『え…っと、何?』
銀時「いや、その…お前ェの部屋から悲鳴が…」
見当はずれな自分の行動に思わず声が尻すぼみになる。
『?』
銀時「…さくら。寝る前に歯磨きしたか?」
『歯磨き?…ああ、もしかして銀さん、あのCM見たの?』
銀時「何?何あのCMって。なんにも見てねェし、なんも怖くねェし。もしあの女が出てきても全然平気だし。むしろ一緒に手繋いでファミレス行ってやるぐらいのつもりでいるし」
『あ、やべ。私寝る前に歯磨きするの忘れて…』
銀時「オィィィ!今すぐ磨けェェェ!」
『…ブハッ』
何故かさくらが吹き出した。
何がおかしいんだよ!
歯磨きして来いよ!
『嘘だよ。磨いたよ…ックク』
銀時「んだよ…趣味悪ィ嘘ついてんじゃねーよ」
いたずらが成功した子どもの様に笑うさくら。
『ごめんごめん。私は何ともないよ、大丈夫』
銀時「でも悲鳴が…」
『ああ、少し嫌な夢見ただけだよ』
そう言ったさくらの額にはうっすらと汗が滲んでいる。
…さっきもうなされてたな。
『…え』
歩み寄り、持っていた手ぬぐいで汗を拭う。
銀時「寝れるか?」
一瞬キョトンとしたさくらは、少し考える素振りを見せるとニヤリと笑った。
『…銀さんこそ寝れないんじゃないの?』
銀時「は?!んなわけねーだろ!快眠だわ!超熟睡だわ!」
『だってオバケとか苦手でしょ?』
銀時「はぁぁぁ!?大好きだから!毎週ほん怖録画してっから!」
『一緒にいてあげようか?』
銀時「ったく、しつけーな!だから怖くも何ともねェって……………え?」