第1章 全ての始まりは雪の中。
健人が語気を強めたので、泉はとりあえず手を上げて返事をした。
髪が乾くと、風磨がいないのに少し気を緩めたのか、泉は健人にずっと抱きついている。甘えているようだ。風磨がいたから多少の遠慮はしていたのだろう。
健人は頭を撫でてやる。
「ハーゲンダッツ!」
「はいはい。風磨が出てきたら、三人で食べようねー」
「おー。風磨ー。早く出てこいー」
「行っちゃだめだってば!!」
お風呂場を開けようとするのを必死で止める。
泉の落ち着きがないので、後ろから抱きしめ、泉の頭に自分の顎を乗せた。
「健人はあまえんぼさんだなー」
「そうだねー」
ほんわかな雰囲気が二人を包み込む。
本当に、つい昨日出会った二人だとは思えない仲良しっぷりである。
泉にも、健人にも、どこか懐かしさのようなものが心を満たしていた。
風磨が風呂から上がると、泉は健人を見上げた。
「健人ー。ハーゲンダッツー」
「あ、うん」
もう少しこうしていたかったな、という思いを悟られないように、健人は冷蔵庫に向かった。
冷凍庫からハーゲンダッツを三つ出し、スプーンも三つ引き出しから取り出した。
「おー!ハーゲンダッツじゃん!中島きゅんったらやさしー!」
「仕方なくだ!泉、どれがいい?」
「おー。んー。これ」
ストロベリー味を選ぶと、早々と食べ始める。一口食べるととても幸せそうに顔を綻ばせた。
風磨はチョコレートを選び、健人は余ったバニラにした。
「健人のも食べたいー」
「はい、あーん」
「あー」
パクッと食べ、自分のものと違った味を楽しむ。すると、風磨もアイスを掬い、泉にスプーンを差し出した。
「あーん」
「あー」
風磨のもまた違った味で、泉は気の抜けた顔をした。
「か、可愛い…」
健人と風磨の声が重なった瞬間である。
ハーゲンダッツを食べ終わった三人は、テレビを見て過ごす事にした。
健人が好きなバラエティ番組を見ている。健人と風磨が時折あはは、と笑うが、泉はどこか意味が理解できないところがあるらしい。すぐに興味をなくすと、健人の膝に頭を乗せ、寝息を立て始めた。