第1章 全ての始まりは雪の中。
「あ…泉寝ちゃった」
「それにしても…この子いくつくらいなんだろうな?」
「見た目は16歳くらいかな」
「でも行動は子供レベルだよな…」
すやすやと気持ち良さそうに眠る泉を見て、二人の男は彼女について推察を始める。
だが、本人が覚えていないと言うし、確かめる術はないので、意味のないものではあるが。
「俺らも寝るか」
「だな。泉、起きて、ちゃんとお布団で寝よう」
「みゅー…健人と寝るー」
「はいはい、分かったから。起きて」
「ふあー」
小さなあくびを一つかまし、起きる。
ベッドに風磨、布団に健人と泉という配置で、三人は就寝する。
健人に抱きつくように眠っていた泉は、夢を見た。
自分が、一人の少年と遊んでいる夢。
少年は笑いながら、少女の頭を撫でている。
少女を持ち上げて、原っぱで寝転ぶ。
幸せが少女の心を満たしていた。
ずっと、ずっとこうしていられるのだろうと思った。
つ…と泉の閉じた目から一筋の涙が伝った。まだ寝入っていなかった健人はそれを見ると、指で拭ってやり、泉の額に小さくキスをすると抱きしめる腕に力を入れた。
一章 完