第2章 重なる唇
健人は泉の後頭部を押すと、優しく、長いキスをした。
「にゃ…」
「俺も好きだからした」
「健人ー。おうち帰るー」
「うん。帰ろ」
二人は手を繋ぐ。そして、ソファに座る風磨を見た。
「というわけだから、泉はあげない。俺は女として、泉が好きだ」
「さようですか」
「風磨、ばいばい」
個室の扉が閉まる。
一人残された風磨は「あれ、俺もしかして今ものすごく寂しい男かな」と思ったが、それを認めてしまうと泣きたくなるのでやめておいた。
そして、不敵に笑うと、
「俺もだし」
と誰の耳にも届かない呟きを口にした。
二章 完