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僕だけのペット

第1章 全ての始まりは雪の中。


たまにメンバーが来てご飯を食べて行く事はあるが、女の子と家でご飯--それも自分の作った--を食べるのは初めてだ。そもそも、この家に女の子を入れた事すら今までに無いことである。
少女はガツガツと、しかし下品でなく食べ物を口に運んだ。

「美味しい?」
「うむ。美味ー」

話し方の変わった子だ。
一通り食べ終わると、少女は健人の膝に頭を乗せて寝転んだ。

「名前ー」
「え、俺の?」
「他に誰がいるというのだねー」
「健人だよ。中島健人」
「健人、健人ー」

少女は何故だか楽しそうにリズムをつけて、健人の名前を復唱した。

「君は?」
「んうー?」
「君の名前」
「ふむ……キャメロンディアス」
「嘘をつくな」
「わからん」
「え?」
「私は記憶がないのだよ。どうしてここに運ばれたのか、自分は誰で、どこから来たのか、全くノーメモリーなのだー」

随分深刻な事を、スラリと伸びた細い脚をプラプラさせて軽く言う。
健人は思わぬ発言に驚いていた。

「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「……泉」
「泉?」
「うむ。本当の私の名かはわからんが、この名前を呼ばれるとなんだか安心するー」

つい泉の頭を撫でてしまう。サラサラの少し柔らかい髪。嫌がられるかと思ったが、泉は「にゃー」と気持ち良さそうに目を細めている。
可愛いな、と素直に思う。
すると、眠かったのか、泉はまた眠ってしまった。健人は苦笑いをし、彼女をベッドに運ぶ。
そして、自分も布団を引き、眠ることにした。

翌朝。

「ふあー…朝か…っ!?」

気付けば隣に泉がいる。ベッドの上からは毛布が落ちていて、泉は安心しきったような顔でぬくぬくと健人の温もりを感じていた。

「泉!」
「んうー?」
「いつ俺の布団に入ったの?」
「覚えてないー」

泉は健人に抱きつく。もっと一緒に寝ようという意思表示なのが手にとるように分かる。

「眠いの?」
「うむ」
「じゃあご飯後にする?」
「ごはんっ!ごーはーんー!」
「切り替え早いね…」

味噌汁と卵焼きを作って、健人と泉は二度目の食卓を囲んでの朝食を迎えた。
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