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僕だけのペット

第2章 重なる唇


「もー。寝てていいって言ったのに…」
「健人…隣じゃなきゃ眠れにゃ……」

泉は健人の顔を見て安心したのか、それともまだ若干の不安が残っているのか、健人のコートをしっかり握ったまま、眠りについてしまった。
健人はふ…と笑みを漏らす。仕事の疲れなど、この笑顔と寝顔を見られれば吹き飛んでしまう。
失礼承知で、ペットのようだ、と思った。
完全に寝たのを確認すると、夕飯を食べ、風呂に入り、寝る支度をして泉の隣に寝転がる。毛布の中はもう泉の体温ですっかり温かくなっていた。無意識に健人の方に体を寄せ、泉はむにゃむにゃと気持ちよさそうに眠っている。健人も、それで安心し、温もりを感じながら、目を閉じた。


それから二週間の日が経った。
健人と泉の関係は相変わらず、進むでも戻るでもない。
家にいて当然、傍にいて当然の関係は強まりつつあるが、それ以外で発展した事はなかった。
その日の健人はオフで、一日中一緒に遊んでいた泉は大変ご機嫌だ。健人も久しぶりにゆっくりと泉と過ごせた日が楽しくて、嬉しくて仕方がなかった。
夕飯を食べ終えた二人は、いつも通りこたつに入ってテレビを見ている。
いつもなら寝る時間なのだが、その前にやっていた番組の間のCMで、健人のドラマがこれから放送される事を知らせてしまった。しまった、というのは健人の気持ちだ。テレビに映る健人も大好きな泉は健人が寝ようといくら言っても聞かず、テレビの前から離れなかった。

「健人のお仕事見るー」
「しょうがないなぁ…」

諦めた健人は恥ずかしさを堪えながら、自分が出ているドラマを見ている。そこで、あの時のシーンが流れた。恋人の親友とのキスシーンだ。
健人の脚の間で見ていた泉がビクッと跳ねたので、健人も驚く。

「ど、どうした?」
「……むう」
「泉?」
「もー見ない。知らない。寝る」

泉はこたつから出ると、ベッドに乗り、布団を被ってしまった。明らかにご機嫌ななめなのが分かる。
しかし健人はその理由が分からず、焦ってしまう。

「泉ー?どーして怒ってるのー?」
「怒ってにゃいー」
「怒ってるじゃない」
「…健人、あの人が好きなのか?」
「え!?」
「この間風磨から電話がきた」
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