第12章 混乱
「知ってるもなにも、あれだけ目を引けば嫌でも目に入るわ。」
先ほどまでとは打って変わり冷たい目つきになった玉艶は、カナの髪を上から下へと指で梳いて行く。
「あの子…テルは財も力も無いちっぽけな国からある日突然嫁いできたのよ。陛下が目をつけてその国へ攻め込み、和平の条件にされたの。ふっ、それを聞いた時は仲良くしてあげてもいいと思ったわ。なんて哀れな子って。でも違った。」
「違った…?」
カナは自分の知らない母と祖国の話に惹きつけられていた。
髪を梳いていた玉艶の手が止まる。
「あの子は不幸な顔を少しも見せずにバカみたいにヘラヘラしてたわ。おまけにあの容姿と温厚な性格で浮くどころか従者たちもあの子へ集まっていった。女遊びの絶えなかった陛下もあの子の虜で、寵愛を一身に受ける日々。
だから私はね、あの子を壊してみたくなったの。」
玉艶の笑みに背筋が凍った。