第11章 親と子
紅炎と別れ、渡された赤い羽織を肩にかけて部屋に行こうと体の向きを変えた。
その時だった。
「あら?おかえりなさい。はじめましてのほうが正しいかしらね。」
背中の向こうに感じる気配はその声とは裏腹に禍々しいものを纏ったものだった。
振り返ることも出来ず冷や汗が流れる。
「どうしたの…よく顔を見せて。」
肩に触れた手に促されて振り返る。
「はじめまして…皇后陛下。」
会ってすぐにわかった。
美しい黒髪をもつ、白龍とよく似た妖美な女性。
聞いていた年齢よりもかなりわかく見えるが、本当に2人も子どもを産んだのだろうか。
あまりにも突然のことで声が掠れてしまった。カナがなかなか目を合わせられずにいると、その気持ちを知ってか玉艶は柔らかく微笑み、カナの体に腕を伸ばしてギュッと抱きしめた。
「そんなに硬くならないでいいのよ。」
玉艶がゆっくりとカナの頭を撫でながら耳元で話し始めたため、カナは理由のわからない安心感に戸惑っていた。