第10章 浮かぶ傷跡
「ジュダル…貴様!!!」
「んだよ、そんなに怒るなよ。」
怒りに震えるシンドバッド王とは対称的に、つまらなそうに口を尖らせるジュダルと呼ばれる黒い彼。
彼は強く私の腕を引くと、またゆっくりと宙に浮かび始めた。
「悪いなシンドバッド!今日はこいつ連れて帰るように言われただけだから戦えねえんだ!また今度な!」
「ジュダル、紅奏姫は今シンドリアの大切な客人だ。安安と許すわけにはいかない。」
「それがよぉ、そういうわけにもいかねぇんだよ。」
ジュダルはめんどくさそうに頭をかきながら続ける。
「ちょうどいいやシンドバッド、お前も聞けよ。」
私は彼の言葉を聞いて、息が止まったように感じた。
おそらく他のみんなもそうだろう。これから大きく世界が動き始めるであろう、そんな言葉なのだから。
「皇帝の紅徳が死んだ。だからこいつには煌帝国に帰ってくるように命が出た。」