第10章 浮かぶ傷跡
「そう…だね。」
何もわからないだけじゃない。何の役にもたたないなんて。あぁ……また泣きそう。
すでに泣き腫らした目を強く擦ると、覚悟を決めた。
「お願い…してもいいかな?」
彼から返事をもらい、空に浮かぶ彼の手を取る。
しかし。
「うわ!ビビるじゃねえか!!」
しかし、その手はすぐに話された。
「え……?」
しかし、彼はすぐにまるでおもちゃを手に入れた子どものような笑顔で私を見た。
「なるほどな…ババアが欲しがる訳だぜ。」
「ねぇ…なんの話?」
「ん?いいんだよ、行くぜ。」
私の片足が地を離れたその時。
鋭い何かが彼の腕をかすめた。
「ってぇな!何しやがんだ!!」
彼の目線を追う。
「あっ……。」
風に揺れる銀色の髪。おそらく慌てて追ってきたのだろう。肩は上下し、額には汗が滲んでいる。
「ジュダル!!姫を話せ!!」
「んだよ、弱いやつは黙っとけよ!!」
彼が軽く杖をふりかざすと、空中に氷の塊が現れた。それらはジャーファルさんの服を貫き、貼り付けるように壁にささった。
「待って!あなた煌帝国の人なら条約を知っているでしょう?煌とシンドリアは友好関係にあるんだから、攻撃なんかしたらっ!!」
「んなの関係ねぇよ!おもしれぇから戦うだけだろ!」
再び放たれた氷の塊を止めようとして手を伸ばすけれど届くことすら出来なくて。
「やめて!ジュダル!!」
瞬間眩しさのあまり目をぐっと閉じる。
しかし、目を開けた時ジャーファルさんに当たる前に氷は消えさっていた。
「遅えぞ!シンドバッド!」
そこにはジャーファルさんをかばうように鱗のようなものに覆われたシンドバッドさんが立っていた。
彼の瞳は明らかに怒りに染まっている。