第10章 浮かぶ傷跡
「そうだ。だから俺はなんとしてでも紅奏姫の力を手に入れたい。シンドリアのためだけではない。彼女の力が他国へ渡り、悪用されるのを防ぐためでもあるんだ。」
わかってくれ…ジャーファル。
シンドリア王の絞りだしたような弱々しい言葉。
しかし彼に主の言葉は響かなかったらしい。
「シン…あなたは強欲すぎたんです。力を求めすぎた末路には破滅しかない。私は…シンドリアではなく彼女一人を大切にしたい……。」
「ジャーファル……お前…!」
王の身につけた7つの金属がキラリと冷たい光を放つ。
「お前には俺や国のためでなく、人として自分の幸せを見つけて欲しいと思っていた…あの時からな。だからお前が守りたいと思う相手を連れて来たなら俺は祝福しようと決めていたんだ。だが…彼女はだめだ。彼女は必ずこの先戦争の中心に立つ。…そうなればお前も彼女も…無事ではすまされない。」
「父親ですか…あなたは。」
互いを思う気持ちは同じ。
けれどそれぞれにまた守りたい相手がいるばかりに、彼らの歩む道が分かれようとしている。