第10章 浮かぶ傷跡
聞こえてきた話に耳を疑う。
ジャーファルさんが見ていた?
…ずっと?
恥ずかしさから体が熱くなるのがわかる。自分が異性と見つめ合い、おまけに口づけまで……!!
恥ずかしい。なんであんなこと……。
閉じたまぶたに力が入る。
カナが1人悶々と後悔していると知らない2人は、イスに座って向き合う。
「ジャーファル、前にも言ったがお前は姫に気持ちを寄せすぎた。全てはシンドリアのため。俺はそのためならば、悪にだってなんだってなってやる覚悟でいる。」
「あなたが何になろうが姫は姫だ……。国のためなら芝居をして姫を騙すことも厭わないってのか…!」
騙す……?
カナは聞こえた2人の会話に耳を疑う。
シンドバッド王が…私を?
「ジャーファル落ち着け。紅奏姫が起きるだろう。」
熱く肩を切らして叫んだジャーファルとは違い、冷静に淡々と言葉を紡ぐシンドバッド。
「紅奏姫も一国の皇族だ。かつ女性ならば自国のために自分がどうなるべきか理解しているだろう。しかも今回は煌から仕掛けてきたことだ。あちらもそれを望んでいるんだろうさ。」
「そんなこと関係ない!シン!あなたは紅奏姫の力を利用したいだけだ!!」
私の…力……?
自分を置いて繰り広げられる話について行けないカナは戸惑うしかなかった。