第10章 浮かぶ傷跡
「どうだ?」
「まだ眠っておられるようですね…。」
声からして部屋に入ってきたのはシンドバッド王とジャーファルさんらしい。
こうして目を閉じているとなんだか見られているような気がして恥ずかしくなってくる。バレないように顔中の筋肉を固めようとするが、すればするほどなんだか可笑しくなってくる。
耳をそっと澄ませば、1つの床の軋む音がだんだん近づ
いてくるのがわかった。
すると顔に影がかかる。
優しい手つきで髪をすかれ、その手はそのまま頬に添えられた。温かい手が気持ちいい。
「先ほどのは……本気ですか?」
遠くでジャーファルさんの声が聞こえる。
じゃあこの手はシンドバッド王……?
そうわかると先ほどまでを思いだして途端に恥ずかしくなる。どうして流されるようにシンドバッド王に愛おしさを感じたのか自分でもわからない。でも人から向けられた愛情を心地よく感じたことは事実だった。
キス……しちゃったんだ。
次々と思い出していくと、なんと自分は恥ずかしいことをしたのかと後悔すら覚え始めてしまう。
「お前には……冗談に見えたか?」
「いえ……。」
「全く、ずっと覗いてたやつがよく言う。俺は本気さ。紅奏姫を妻に迎えよう。」
「気づいてたんですか…、」
「だがそのおかげでお前はすぐに駆けつけれた。おあいことしようじゃないか。」