第10章 浮かぶ傷跡
ん…。
目を開けるとまず目に入ったのは、ふわりふわりとかぜに揺れる真っ白なカーテンだった。
かすかに潮の香りがする。
……。
今の状況をモヤがかかったような頭で考えてはみるが、なかなかハッキリとはしてくれない。
“たしか目を閉じる直前にも白い布が揺れていた。”
「あ…そうだ。」
それをきっかけに鎖を引くように次々と記憶が戻ってくる。そうだ、最後に見たあれはきっと官服。
あの時…シンドバッド王が倒れた時に自分は情けなくも気絶してしまったらしい。
そして微かに記憶にある、鼻をかすめた糸のように細い銀の髪は、誰がここまで運んでくれたのかを示すには十分すぎるものだった。
…お礼を言いに行かなきゃ。
体にかけられた布から抜け出して立ち上がる。
トントントン
しかしそれとほぼ同時に叩かれたノックの音驚き、思わず再びベッドに滑りこむ。
「まだ眠っているのですか?」
恐る恐る扉を開ける音。
あぁ、寝たふりをしてしまった。