第2章 異彩の女
彼女に親は居ない。
いや、居たはずだった。
母はその物珍しい髪と瞳の色、マゴイの多さを見込まれ、異国から皇帝の側室として嫁ぎに来た女性。
優しく、朗らかだったと聞いた。
きっと彼女の容姿は母に似たのだろう。
父は言わずと知れた煌帝国第二皇帝、練紅徳。
そう、彼女は皇女なのだ。
しかし彼女は今、囚われの身となっている。
母の温もりを知らず、父には名すら呼ばれたことはない。表に顏を出したこともないため、彼女を知る者はたとえ兄弟といえど居ないだろう。
…しかしこれらは彼女が幽閉される理由にはならないだろう。また、疑問が生まれた人もいるのではないだろうか。…なぜ母を知らないのか。
次はそれについて語ろうか。