第9章 気持ちの行方
「シンドバッドさん!!」
シンドバッド王に連れられて入った部屋には、アリババくん達と白龍くんがいた。
カナに気づくと駆け寄って来てくれるほどの仲になれたのは、紅玉が仲を取り持ってくれたおかげ。
「みんな待たせたね、今日は話しがあって集まってもらったんだ。」
シンドバッド王がそう言って椅子に座る。
ッ……。
するとどこからともなくジャーファルさんが現れて、その横についた。
「君たちには迷宮攻略に行ってもらいたい。自分の力を見つめ直す良い機会にもなるしね。」
横でグッと拳に力を入れるアリババくん。
彼のことも紅玉から聞いた。彼の国バルバッドは煌帝国に占領されて、王子である彼は自国から離れる形になったとか。自分が知らない内に煌がどんどん力を大きくしている。…大きなモノは小さなモノのたくさんの犠牲の元成り立っているということを上の人間は理解しようとすらしない。しかし自分もその人間の中に含まれるのだから結局私も偽善者なわけで。
ちらっと白龍くんに目を向けると、彼もまた拳が震えていた。
「俺も行かせてください。俺は目的のために力が欲しい。」
低い、決意に満ちた声。
「あぁ、もちろんそのつもりだよ。君たちが力を合わせれば不可能はないはずだ。」
ジャーファルさん……。
生き生きとして笑うシンドバッド王の横で、ジャーファルさんが姿勢を落としたことをカナは見逃さなかった。
なぜか痛む胸をグッと抑える。
〝……私は私を演じきるまで。〟
チャンスは人が集まっているこの場しかない。
視線をシンドバッド王へ向ける。
「私は…どうしてこの場に?」
みんな士気が高まって盛り上がっていたため、カナの疑問というよりも不信感が強く現れた声は、自身が思っていたよりも凛と響いた。