第8章 影は動く
ん……。
目を開けると白い天井が見えた。
ボーっとして働こうとしない頭では何もわからない。
ふと、左手に違和感を感じて目をやると、
俯いたまま手を握る紅玉がいた。
また熱が出たのか……。
昔から度々起こる高熱がまた出たのかと状況を察する。
ここ最近は落ち着いていたのにどうして……。
とにかく心配をかけてしまったであろう紅玉に謝ろうと、渇いた喉から声を絞りだす。
「紅玉…?」
しかし紅玉は肩を小さくビクつかせる。
それだけ。
「紅玉ごめんなさい。心配かけてしまったわ。でも大丈夫。熱が出るのはよくあることだし、少ししたらきっと…」
体を起こすと、安心させるように優しく声をかけてみるが、左手が僅かに濡れていることに気がついて思わず口が止まる。
「紅玉……?泣いているの?」
また紅玉の肩が小さく跳ねたのを確認すると、カナは紅玉の肩に手を出した。
バシッ
払われた手が行き場も無く、拳を作って膝に戻る。
カナは驚いて唖然としていた。
「ご、ごめんなさい…。」
未だ顔を上げない紅玉が震えながら呟く。
どうしたの?
カナがもう一度声をかけると、紅玉は小さく息を吸い込んだ。
「私は……お姉様にとって何ですか?私は大きな物なんて望んでいないのにどうして……!」
ゆっくりと紅玉は顔を上げる。
「私はお姉様に近づきたいのに、私はお姉様のこと何も知らない!お姉様は何も教えてくださらないじゃない!!」
カナは言葉を失った。
今度はカナが俯いた。