第8章 影は動く
庭の中央に座り、花かんむりを作り始める6人。
年も近いおかげか直ぐに打ち解けた彼ら。
そんな姿を王宮のとある部屋から静かに見下ろす影。
一つは低い壁に片肘をついて立ち、もう一つはその後ろで悔しそうにうつむいている。
「…王の言うように、確かに彼女には他人のルフを引き寄せて自分のマゴイへに変える力があるようです。本人に自覚は無いようですから、彼女は無意識のまま24時間体を特殊なルフで覆い、力を使い続けているのでしょう。」
溢れる気持ちを抑えこむような、静かな声。
「そうか。…力の大きさはどうだ?」
「…相手のマゴイ量に関わらず微量を吸い続けています。しかし、側にいるだけでは何も起こらなかったので、彼女に接触することが力の発動する条件になっているのではないでしょうか。」
「ありがとう、ヤムライハ。それだけわかれば大きな収穫だよ。」
どこか周りと距離をとるようなその笑顔。
とっさにヤムライハはシンドバッドの腕を掴んだ。
「か、彼女との協力という道もあるはずです!彼女だってアラジン君達と変わらない子どもなんですよ?きっと…きっとあの子ならわかってくれ「ヤムライハ。」」
ヤムライハが必死に掴んだ腕は冷たく離れ、必死の言葉さえ主人には届かなかった。
「彼女に余計な感情を持つな。彼女が煌帝国側である以上、深入りはできないしアルサーメンとの繋がりも否定出来ない。」
「しかしっ!!」
「確かに彼女には力の他に何かあるだろう。彼女の雰囲気といい従者の様子といい、疑問はある。だが1人のために俺は国を危険に晒すわけにはいかない。…わかってくれないか?」
ヤムライハは涙を堪えるように拳に力を入れる。
「…近いうちに行動を起こす。八人将には彼女に対して必要以上の接触をやめるように伝えてくれ。微量とはいえ、元のマゴイ量が少ないマスルール達にはキツイだろうからな。」
ヤムライハは再び中庭で笑うカナを見つめた。