第7章 再会は“はじめまして”
ヤムライハがどうぞと促す部屋に入ると、皆大きな机を囲んで談笑しているようだった。
しかしカナに気がつくと、一斉に笑顔がこちらへ向く。
「紅奏姫!さあさあこちらへ。」
奥に座るシンドバッドが立ち上がって招くその席は、煌帝国式の衣服を着た男女の向かいにあたる席。
カナは引き寄せられるままに席へ近づくが、2人から向けられた疑惑の視線になかなか顔を上げれない。
シンドバッド王に作った笑顔を向けて必死に気を紛らしていると、すっと椅子を引かれた。
「気を回せずすみません。どうぞお掛けください。」
向けられた何度目かの笑顔に逆らえず、席に着く。
左を向くと、自分も席に着いたジャーファルがまた微笑んでいた。
右には先ほど案内してくれたヤムライハが、その向かいの青い髪の少年となにやら楽しそうに話している。
とりあえずは知った顔に囲まれていることに安心出来たが、相変わらず向かいの席からの視線は痛い。
シンドバッドの挨拶を合図にそれぞれが食事を始める。小皿を取ろうと手を伸ばすと、左横からそっと小皿が差し出された。
皿を持つ腕の持ち主を目で追うと、ジャーファルがまた微笑んでいた。
彼の顔がそっと近づく。
「服お似合いです。とてもかわいらしい。」
そう囁かれた言葉に顔が赤くなるのは仕方がないことなのか。
「あ…ありがとう。」
小皿と言葉。
その時間ずっとカナがうつむいていたのも仕方がないことなのか。
ジャーファルが目を向けると、
その様子を見ていたシンドバッドの口元が上がった。