第6章 七海の覇王
「…昼間の続きを話していただけますか?」
ジャーファルがそう切り出すと、シンドバッドは真剣な目でジャーファルを見つめる。
「あぁ…そうだな。今朝姫君の手を握った時感じたことは話したな?」
「はい。昼間突然呼び出された時は驚きました。…たしか僅かにマゴイを吸い取られるような違和感があったとのことでしたよね。」
「そうだ。…少しずつだがあれは確かに吸い取るという表現が妥当だろう。……しかし幸か不幸か。それを本人は自覚していないらしい。確証を持たせるために明日ヤムライハに向かわせて確かめよう。」
シンドバッドの言葉にジャーファルは少し表情を明るくする。
「ではそれを利用すればシンドリアにとって有益な手になるのでは?」
「いや、たしか会談の時に紅炎は姫君に触れていたんだろう?ならばあちらも気づいているはずだ。気づいていないのは本人だけで、彼女はすでにあちらの駒なのだろうな。」
「そんな…しかし彼女を遠巻きにしては煌に付け込む隙を与えることになります。」
「だからだよ。」
「は?」
シンドリアのはっきりとした言葉に、ジャーファルは思わず声を漏らす。
「昼間彼女から離れてお前に向かわせたのはそのためだよ。彼女の力が既に煌の物ならば、彼女自身はどうだろうか。」
「……といいますと?」
「力を手に入れたいならば、その元を手に入れればいい。これは今日1日の彼女の様子を見ていて思うことだが、彼女は皇女にしては態度が恭しすぎないか?彼女にはそうしてしまう訳があるのだろう。……例えば過去に何かあるとかな。そこを付け込む。幸い侍女も皇女にしては少なすぎるしな。」
シンドバッドはうすら笑う。