第6章 七海の覇王
夜、カナはシンドリアでの1日を終え、1人部屋で髪をといていた。
「……まだ胸がドキドキしてる。今日は本当にたのしかったなぁ。」
そう呟きながら、今日の出来事を思い返していた。
シンドバッドと話をした後、カナは八人将と顔を合わせ食事を共にした。
楽しいと1日が早く終わるって本当だったんだ…。
大勢に囲まれてごはん食べたのなんていつぶりだろう。
もう顔も思い出せない、お母様と過ごした遠い記憶。
兄様達からの大切な役割もあるけれど、今は少しだけ…少しだけ楽しんでもいい……かな?
明日朝食の準備を手伝ったりしてもおせっかいって思われないかな?……みんな喜んでくれるかな?
そう思いながらカナは布団に潜り込む。
…明日が待ち遠しいのは久しぶりだ。
…………。
カナが眠るその部屋の前。
扉の向こうで動く影が1つあった。
カナが眠ったことを確認すると、ゆっくりと扉から離れて歩き出す。
迷わず押し開けた大きな扉。
「寝むったようです…シン。」
緩やかな風になびく薄いカーテンに見え隠れしている大きな窓。その前に立ち、何かを思案するように外の一点を見つめるシンドバッド。
「そうか、すまなかったな。」
ジャーファルの声に振り向くと、微笑んだ。
「いえ…。」
ジャーファルは暗い面持ちのまま言葉を続ける。