第6章 七海の覇王
「こちらでシンドバッド王がお待ちです。」
バザールを抜け、やっと顔を上げれると見上げると、正面には立派な城が立ち構えていた。
煌とは違う佇まいに、文化の差を感じる。
そして今、ジャーファルに案内されるままについて行き、立派な扉の前に居る。
ゆっくりと開く扉にさえ物怖じし、緊張してしまう。
扉が開くにつれて見えていくのは、大きな窓を背景に雄大に構える後ろ姿だった。
「シンドバッド王……。」
「やぁ紅奏姫。今しがたぶりだね。」
振り返り際に揺れる長い髪。
自分が羨む真っ直ぐな髪と悩みの無いようなその態度に腹が立ち、ついいじけたように目をそらす。
「えぇ…まったくですね。女性を置いてけぼりにする殿方とは私も初めてお会いしました。」
「これは失礼いたしました。いや〜、ついついはしゃいでしまいまして。」
ですが。
そう言ってその大きな両手でカナの手を包むと、キラキラとした笑顔を向ける。
「改めまして。ようこそシンドリアへ、煌の使者殿。此度の同盟により、双方がますます発展を遂げることを楽しみにしております。」
「はい…暫くの間お世話になります。シンドバッド王。」
2人が笑顔で語る中、ジャーファルだけは悲しく顔を歪めて2人を見つめるのだった。