第5章 海を渡って
そこからのやりとりは早かった。
紅炎とジャーファルが何枚かの紙を見合うと、会談はお開きとなる。
「申し訳ありません。我が王が欠席のため、正式な同盟を結ぶ場とすることが出来ませんでした。」
「いや、此方も陛下の代理という立場。気にしていない。」
2人が握手をし、たったこれだけで仮だが同盟は結ばれたらしい。
たった何枚かの紙切れと握手で結ぶ絆など、本当に頼りに出来るのだろうか…?
カナが不安そうに2人を見ていると、ふと横から視線を感じた。
見上げると、紅炎達のように真っ赤な髪と…逞しい鎧を纏った体。
「ひゃあっ!!!」
カナが顔を真っ赤にして座り込んだ。
男…あんなに露出の多い……男の方が……。
「……この人運んでいいんすか?」
大きな体から低い声が聞こえている。
「いや、待て。」
紅炎がそう言うと、マスルールは一歩離れた。
「紅奏。」
紅炎に呼ばれ、カナはフラフラとしながら紅炎の元へ走る。
すると紅炎はカナの頭に手を置き、顔をカナな耳元へ近づける。
「……いい報告を待っている。」
体の芯を揺さぶるような低い声に、体がビリビリとする。
「はい……。」
カナはまた顔を真っ赤に染める。
あぁ、この人には逆らえない。