第5章 海を渡って
「それはそれは。我が王は会談後、煌帝国の皆様とお食事を共に出来ればと申していましたのに残念です。お二人だけでもいかがですか?シンドリアの幸はどれもおいしいものばかりですが。」
「おいしいものですkっブフぉ。」
食べ物の話に食いついたカナの口を紅明は片手で押さえつけた。
紅明は笑顔をひきつらせる。
「申し訳ありませんが…我々はこの後別件が立て込んでおりまして。今回は遠慮させていただきます。」
するとジャーファルさんと目があった。
「こちらが今回使者としてシンドリアに滞在される方ですか?」
紅炎に強く背中を押される。
「あぁ、妹だ。」
「第六皇女れ、練紅奏です。」
今朝紅覇殿に叩き込まれた笑顔をつくる。
「はじめまして、ジャーファルと申します。」
ついさっきまで紅明歪みあっていたのとは違い、表向きだけの笑顔を返されたことに少し寂しさを感じる。
そうか……警戒されてもしかたないよね。
この見た目だし。
紅奏は一瞬唇を噛んで下を向くが、直ぐに顔を上げて笑顔を作った。
「ジャーファルさん、しばらくお世話になります。」