第5章 海を渡って
ここは煌帝国とシンドリアのちょうど中間にあたる無人島だと紅明から聞いた。
たしかに島は木々に覆われ、人工物が何も無い。
しかし島には船着き場は無く、カナにはどう島へ渡るのか見当もつかなかった。
「行くぞ、紅奏。」
紅炎に声をかけられると、カナの体はフワフワと宙に浮いた。自分達の周囲を囲む膜のようなものに気づき、触れてみる。
「これは…どういった仕組みですか?」
「あぁ…これは魔法道具ですよ。」
紅炎の横に控える紅明がクスリと笑う。
「これが魔法道具……すごい…。」
「この時代にその反応をされると新鮮ですね。」
膜が弾けて地に足をつけると、そこには見知らぬ格好をした人達が控えていた。
特に前へ出た2人からは圧倒的な威圧を感じる。
紅明が薄く笑い、相手側の銀髪の男性が応えるように微笑むと、カナにもわかるほどのピリピリとした空気が漂った。
「はじめまして、私はシンドリア八人将のジャーファルと申します。彼はマスルールです。練紅炎殿と紅明殿ですね?」
「はい、いかにも。しかし其方のシンドバッド王はどうされましたか?確かそちらはシンドバッド王と八人将2人と使者の方でいらっしゃるという話では?」
紅明とジャーファルと名乗る男性の引きつった笑顔での会話が怖すぎる…!
ふと目を合わせて来たジャーファルに、カナは苦笑いしか出来なかった。
「あぁ、もうしわけない。我が王は多忙のため本日は欠席というこで城にて使者の方をお待ちしております。……そちらもお一人足りないように見受けられますが?いかがしましたか?」
「あぁ!私としたことがうっかりしていましたね。来るはずだった弟は体調を崩しまして。」
紅炎の言葉に紅覇を思い浮かべるが、たしか彼には今朝「いい〜?炎兄に迷惑かけないでよねぇ〜?」と睨みつけられたはずだが…あれで体調を崩していたのか?と頭にハテナが浮かぶ。