第1章 開かない扉
「白龍、この間の扉の話を覚えていますか?」
「はい…長い廊下の先にある古い扉でしたよね。」
「では行きま…「いやです!」」
弟は今にも泣きそうだが、どうにも止まらない好奇心に白瑛は白龍の袖を引っ張っていた。
そんな2人を遠くから見る小さな影。
「と…びら…。」
「姫、またそのような格好で…どちらに?」
後ろから従者らしき男性に声をかけられ、薄汚れた着物が揺れる。
「何も…。」
「ではお部屋へ戻りましょう。紅玉姫。」
夜、従者すら寝て静まりかえった頃、小さな影は整えられた布団から抜け出し、宮殿の廊下を裸足で走り出す。
ハアハア、ッ…ハア。
ペタペタと軽い足音だけが響く中、灯りはどんどん小さくなっていく。
怖い…でも。
“扉の向こうには女の子がいるそうよ。”
もし、会えるならば…。