第5章 海を渡って
それから1週間、カナは忘れていた教養や国の政治、世界の王の存在について紅明に叩きこまれた。
その中でも特に、紅明が強く話すことがあった。
「……七海の覇王、シンドバッド…。」
「はい。彼は金属器という大きな力を7つも保持し、一代で国を作りあげた男です。また七ヶ国と同盟を結んだ七海連合の力は秘めたる力は強大なものです。」
「シンドバッドの、シンドリア…。」
「興味がお有りですか?」
紅明の心を覗かれるような視線に目をそらす。
「いえ、そんなことは…。」
「いいえ、それを聞いて安心しました。兄王様があなたを呼んでいましたから、行きましょうか。」
沈黙に気まずさを感じつつ廊下を進んでいると、紅明は一つの扉の前で足を止めた。
「兄王様、紅奏を連れてきましたよ。」
入れ、と低い声が聞こえると紅明は扉を開けた。
カナはまず室内の様子に目を丸めた。
床を見ても壁を見ても本に埋め尽くされた部屋。しかし紅明は慣れたように足を進めるため、それにカナも続いた。
1時間後、カナは自室の整えられたベッドで疼くまっていた。
「……お母様。私は、どうしたら。」
か細く聞こえる声は震えている。