第4章 光が射すとき
その頃カナは。
皇子2人に連れだされ、考える暇も与えられないまま浴室に押し込まれていた。
…久しぶりのお風呂。体を洗い流した水の色から、どれだけ自分が汚れていたのかがわかり、少しゾッとする。
扉を挟んだ脱衣所から、ヒソヒソと声が聞こえる……。
浴室まで案内したり浴室の使い方を教えたりしてくれたのは侍女達だったが、その間向けられる視線は優しいものではなかった。
幼い頃、自身の異質な容姿のせいで、周りから向けられる偏見はしょうがないものと理解していたはずなのに。久しぶりに感じた胸の痛みは、ヒシヒシと締め付けられているようだった。
「見て、あの髪の色。陛下の実娘と聞いたけれど、皇子達とまるで似ていないわ。」
「生まれてすぐに陛下に捨てられてからは、男を渡って生きていたそうよ。」
「まぁ!では紅炎様のお優しい心に漬け込んで騙そうとしているのかしら。」
無意識に聞こえてくる心無い言葉に、思わず耳を塞いだ。だんだん胸が苦しくなり、浴槽の湯には小さな波紋がたっていた。
「こんなことなら…暗い牢の中で独りぼっちのほうがよかった…。」
お父様に捨てられた自分が今更表舞台に立たされようとしていることに理解が出来ない。
これから自分に起ころうとしていることに大きな不安を抱えたまま、カナは侍女達の待つ脱衣所へ足を進めた。