第4章 光が射すとき
カナの足枷や鎖を外して風呂に入れている間、紅明は紅炎の横でシンドリアへの返事の文を書いていた。
チラリと横目で紅炎を窺うと、彼には珍しく子供が新しいおもちゃを見つけたような笑みをこぼしていた。
「あなた様がそんなにも楽しそうに笑っていらっしゃるとは珍しい。」
「フッ。そうか、俺は笑っていたか。」
「……あの方に何かありましたか?」
すると紅炎は自らの手のひらを見つめる。
「あの女、何か力があるようだ。」
「力…ですか?」
「……あいつに触れた時、僅かだがマゴイを吸われた。」
紅明が目を丸くする。
「他者のマゴイを吸い取るとは…魔導師だということでしょうか。」
「いや、あれはそんな素振りを見せてない。それにあの怯えようからして自身の力に気づいていないだろうな。」
「あぁ…なるほど。それなら十数年前の流行り病の対象が一部の従者だったことにも納得がいきますね。本人が気づかない内に少しずつ従者のマゴイを吸い続け、それが重なってついには吸い殺したと…。」
「フンッ、哀れだな。大方母親を殺したのも奴だろうな。」
片肘をつき拳に顔を乗せ、紅炎はまたニヤリと笑った。
「あれをシンドリアへやる。紅明、準備を。」