第4章 光が射すとき
「も、申し訳…ありません。」
怯えて体を震わせながらも、すぐに頭を床に押し付けて謝罪する。
一国の皇子を押しのけてしまった…。
それは下手をすれば追放どころか殺されてもおかしくはないことで、横で唖然とする紅明の様子からも事の重大さがヒシヒシと伝わってくる。
触れられたことへの恐怖とこれから与えられるであろう罰に震えが止まらない。
「ご、ごめんな…さ「なんだ今のは!」」
ものすごい形相で迫る紅炎に再び涙が滲んだ。
自らの手のひらを見つめる紅炎。
「兄王様、大丈夫ですか?」
紅明が側に駆け寄るが、紅炎はその言葉を聞かずに、何か面白いものを見つけたように笑っていた。
「ハァ……今のことは内密にしておきましょう。それより、この方でいいんですね?」
「あぁ、只のネズミにしては牙があったらしい。」
相変わらず企むように笑っている紅炎。
「ネ、ネズミ……。」
「おい女、話しの続きだ。お前を外に出してやる。」
「外に…ですか?」
この扉を越えて外に。
「私は…。」
「勘違いするな。お前に選択肢など無い。」
唇を噛み締め俯くカナに、紅明が近く。
「あなたはここで誰にも気付かれずに死ぬ筈でした。あなたを助けたのは誰か、心に留めておきなさい。」