第4章 光が射すとき
「はぁ…予想通りとはいえ、この忙しさには目が回りますね。」
部屋に着き、椅子に腰掛ける紅明。
「……兄王様。そういえばあれはどうするのですか?」
読んでいた本を閉じ、顔をあげる紅炎。
長年決して友好的とはいえない関係だった煌帝国とシンドリアは、友好の証としてある条件を交わしていた。
「…あぁ、あれか。」
“両国から交換留学生として1人ずつ、それぞれの国に渡って文化を学ぶ者を有する。”
これはシンドバッドから出された条件であり、煌帝国はこれに頷いた。
「…おそらくシンドリアはその者から我が国のあらゆる情報を引き出すつもりでしょう。ですがこちらも条約の条件ともなればそれなりの者を用意しなければなりませんし。」
「だが、こちら側に有利な点もある。」
「…有利、ですか?」
「シンドバッドは女癖が悪いらしい。ヤツの子に練家の血が流れるならば、これからシンドリアは皇に手を出せん。七海連合も同じことだ。」
「はぁ…なるほど。ですがシンドバッドは生涯妻を持つ気は無いと。」
「そんなものなんとでもなる。未婚は紅玉と紅琳か。」
「紅琳はだめです。もう嫁ぎました。」
紅炎は持っていた本を机に置いて立ち上がった。
「紅玉は惜しい。金属器をヤツにやすやすと明け渡せん。」
「紅玉はバルバッドの件があったばかりですからね。白龍と共にまだシンドリアに身を寄せているようですから、条約の前に帰国するように連絡をとりましょう。」