第3章 隔てるモノ
人も草木も眠る静かな夜。
丸い月が滲み輝くその下では、月と僅かな灯を頼りに紅い髪の少女は慣れた足で扉の前に立つ。
「カナ、来たわよ?」
息を切らしたその声の主は、ゆっくりと扉を背に座りこむ。
「ありがとう、紅玉。今日は何のお話?」
なるべく手足についたそれを鳴らさぬように、扉へ近づく黄色い少女。
毎夜二人はこうして会い、たわいもないことを話し込んでいた。
お互いに顏は知らないまま。
いつしか2人の間には絆がうまれていた。
しかし
「……カナ、あなたのことも教えてちょうだい?私はあなたの名と、女性ってことしか知らないわ。私たちお友達でしょう?」
「…私には何もありません。…だからもっと、紅玉の見ている外の世界を知りたいのです。」
紅い少女は日常を偽り、誰にも会わなくてすむ彼女を羨んだ。
黄色い少女は自らを隠し、自由に走れる彼女を羨んだ。
“自由に生きる道を、他人から受ける本当の愛を欲する”
よく似た2人が愛を知ってしまう時、涙を流すのは誰なのか。