第3章 隔てるモノ
月日はどんどん流れるが、カナの鎖が外れ、外の光を浴びることはなかった。
日付も時間すらわからない日々。
食事を届けにくる兵から浴びる蔑んだ視線。
毎日何も無く過ぎていく日に狂ってしまいそうだった。
しかし、その日は違った。
カナは久しぶりの高熱に眠ることも出来ず、倒れこんでいた。息は荒く、視界がぼやけている。
石の床は冷たく、寂しさを増していた。
その時。
床に片耳を付けていると、ヒタヒタと聞こえる足音。
こんなところに人が来るなんて…と、
カナは苦しさを横に耳を澄ませていた。
扉の前で止まる足音。
小窓からは星が覗いているので今は夜のはずだ。
「……ねぇ、誰かいるの?」
不意に聞こえた声に身を硬くする。
「……辛いの?」
自分より少し幼いような可愛らしい声。
…自分は人に近づいてはいけない。そう自分で決めたのに、久しぶりに自分に向けられた言葉が嬉しくて。
少し話すだけなら…。
「……だれ?」
そう言うと、ヒャアッと驚いたような声がした。
驚かしてしまったようだ。
「…私は紅玉よ。…あなたは?」
なんとも自信無さげな声。
「こうぎょく…あたしはカナ。」
今だけのつもりだった。
「カナ……あなた、私の話し合い手になりなさい!」
言葉とは裏腹に、絞り出したようなか細い声につい笑ってしまう。
「な、なによ!」
「いいえ、よろしくお願いします。紅玉様。」