第1章 短編
何故こんな事になっているのだろうか・・・?
拘束され死んだ目になっている私の横には、同じように拘束されているカドルスとギグルスがいる。
そして、私達の前には幻影旅団と言う集団がこちらに殺気を浴びせてくる。
二人は身を寄せ合って怯えているが、私はもう無理だと脱力しきっている。
生きようとは思っていない。
「お前達は何者だ。」
一番奥に座っているオールバックが聞いてくる。
何だアイツ、何で裸コー・・・いや、何でもない。
本人が好きでやっているのかもしれないからな。
「何者と聞かれても・・・、ただの一般人だよ。」
正直ただの、では済まない秘密があるのだが、こいつ等に言っても無駄だろう。
「嘘だな。膨大な量のオーラが垂れ流しになっている。」
「オーラ・・・?」
知っているかと二人に視線をやると、二人とも首を横に振る。
スニフなら知っているかもしれないが、残念ながら今此処にスニフは居ない。
分からない為黙っていたら、全身黒で統一された目つきの悪い男にナイフを突きつけられた。
少し刺さっているのか、血が首を伝う感じがする。
まぁ、だからといって泣いて許しを請うたりはしないが・・・。
フリッピーには、もっと酷い事をされた事がある。
それも数えきれないほどに。
それこそ殺された事だってあるんだから。
「痛い・・・。」
慣れているからといって痛くない訳じゃないが。
それに私は、このピリピリとした痛みが一番嫌いなのだ。
傷は小さいくせに痛みだけ長く続くんだから。
「早く言えば楽になるよ。それに、こちも暇じゃないね。」
変な喋り方に笑ってしまいそうになったが、なんとか堪えられた。
こんな状況で笑えるなんて、私も余裕があるようだ。
「スプレンディドがいたら・・・。」
この言葉には、流石に私も焦ってしまう。
そんな事を言ったカドルスをキッと睨みつける。
すると、驚いたのかカドルスが勢いよく体を捻る。
そう、この時カドルスは帽子を被っていた。
それも今日はライブに行く予定だったので、クールにしたいと銀のスタッズがついた帽子だ。
身を寄せ合っていた二人の距離は近い。
必然的にカドルスが体を捻ると拘束されていたため避けれなかったギグルスに当たるのだ。
何がって・・・、スタッズのついた帽子だよ。