第1章 短編
「暦君、ねぇ――――見て、暦君」
「何だ?」
何の警戒も無く振り向く暦君に向かって手を伸ばす。
人差し指だけを伸ばした私の手に暦君の頬が触れる。
「・・・」
「ひっかかったー」
「いや、そんな無表情で、しかも棒読みで言われても此方が反応に困るのだが・・・」
首を傾げながら暦君の胸倉を掴み引き寄せる。
耳元に口を寄せながら小さく囁く。
「暦君、いったい何人の女の子に会ったのかな?否――――遭ったのかな?」
「そ、れは・・・」
冷や汗を流す暦君に目を細める。
突き飛ばす様に胸倉を掴んでいた手を離す。
急に離したためか、しりもちをつく暦君に言う。
「別に怒っている訳じゃないの。ただ―――――私以外に、そうゆう関係の子が居るのなら、ちゃんと話しておくべきだと思うの」
「勘違いだ!僕をそんな最低なキャラにするな!!」
「えっ?居ないの?暦君の事だから、愛人の一人や二人居るのかと思った。あっ、いえ、三人や四人居るのかと思った」
「意外そうにするな!!しかも何で人数を増やした!?」
拗ねたように頬を膨らませそっぽを向く。
さっきまで、煩いぐらい元気だった暦君が面白い程に慌てだした。
「いやっ、だから!戦場ヶ原や羽川は、友達ていうか、何というか・・・」
「友達ねぇ・・・。ふーん、まぁ別にいいけど」
「お前、ふーんって、別にいいって・・・」
落ち込んだ様子の暦君にどんな言葉を掛けようか悩む。
そういえば、暦君は座り込んだままだ。
「暦君、いい加減立ったらどうかな?地面が汚れちゃうよ?」
「僕じゃなくて地面が汚れるのかよ!!・・・ったく」
よっこいせ、と年寄りくさい掛け声を出しながら立ち上がる暦君の手を握る。
「どうした?」
不思議そうにする暦君を見て思う。
これだから、暦君は女の子にモテないのだ。
いや、今はモテて居るんだっけ?
少し悔しく思いながら口を開く。
「これからデリカシーのない男、暦君にお願いを言おうと思います」
「何故僕がデリカシーのない男と決め付けられ、その願いを叶える前提で話が進んでいるのだろうか・・・」
「煩い黙って聞いて」
「・・・はい」