第2章 町に風が吹く
『これって……さっきの』
つう、と一粒。
生温い雨粒が頬を伝った。
不思議と高まっていく鼓動。
ワクワク……ともまた違う、
この気持ちは一体何だろう。
そこから先はほぼ無意識だった。
まるで何かの引力に惹きつけられるようにして足が進み、気付けば私は全身びしょ濡れになって「こわしみず」を探していたのだ。
『……あった』
そう、それはあった。
弟の云う伝承の通り二本杉に挟まれた小さな泉は、祠の裏手に広がる雑木林の中にひっそりと佇んでいたのだ。
突然ぽっかりと開けた空間にある其れは気味悪いほど透明度が高く、美しい水面を降り止まぬ雨が波立たせている。