第4章 揺らめく行灯
「やっと目ェ覚ましたか、覗き女」
『……覗きなんてしてません』
私は何を言ったらいいのか分からず取り敢えずボソボソとそんな事を言う。
するとイケメンは咥え煙草をしたまま此方に近づいてきた。
「じゃあ何だ、俺の命(タマ)でも取りに来たか?」
『たっ……玉!?な、何を言ってるんですか!そんな物欲しい訳ないでしょ!』
「オイ、どこを見てるんだ、どこを。そっちの玉じゃねえよ変態女」
フーッ
わざとらしく白煙を吹きかけて来るイケメンは、これでもかと眉間に皺を寄せている。
すごく怖い。
あと、臭い。
「頭の方はどうだ」
『へ?』
「痛ェかって聞いてんだよ」
やたら近い距離から問うてくる切れ長の眼に鼓動が駆け足になる。
ドギマギと視線を逸らして自分の頭部に触れてみると包帯だろうか、柔らかい布が丁寧に巻きつけられている事に気が付いた。
ちなみにこの時、びしょ濡れだった筈のTシャツとジーンズが濃緑色の浴衣に着替えさせられていたのだが……『裸見たの!?エッチ!』などと騒いだらブチのめされそうだったので止めておいた。