第3章 水も滴るイイ男
ツルッ
「うお……っ!」
恐らく檜なのであろう湯船の縁で足を滑らせたイケメンは盛大に転けたのだ。
私の腕を掴んだまま。
バシャーンだのゴンッ!だの、
ありがちな効果音が耳に響く。
見事に巻き添えを食らった私は頭部を縁に強打したのと同時に気を失ってしまったのだがー……
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「痛ってェ……おい女、お前、今俺が転けた事は誰にも言うんじゃねえぞ……分かったな?」
シンと静まり返った風呂場に武装警察真選組副長・土方十四郎の声が虚しく響く。
その傍らで倒れている“こちらの世界”出身の女・はピクリともしない。
「てめェ聞いてんのか……なァ、オイ……冗談だろ」
じわり。
の頭から真っ赤な血が滲んだ瞬間、土方の頭に浮かんだのは「殺っちまった」の一言であって。
慌てて彼女を担ぎ上げた副長殿は光よりも速く現場の証拠を隠滅し、濡れた身体もそのままに着流しを引っ掛けて自室へと走り去るのであった。
その後、
目を覚ましたがきっちりと着替えさせられた自分の衣服を見て絶句するのだが……それはまた次回のお話。