第3章 水も滴るイイ男
「逮捕だ」
へ……?
思わず掠れた声が出たが、たぶん相手までは届かなかっただろう。
濛々と上がる湯煙。
汗なのか湯なのか分からぬ水が互いの髪から滴り落ちる。
「真選組屯所への不法侵入及び強制猥褻罪で現行犯逮捕だ」
聞き慣れない言葉の羅列を前に私はついに思考が停止した。
泉からここへ飛ばされた不可思議な現象すら未だ謎だというのに、今度は「新撰組」?
完全にお手上げだ。
意味が分からない。
そんな私を余所にイケメンは痴女を風呂から引き摺り出そうと腕を掴んでくる。
真近で見る彼の素肌に一瞬ドキッとはしたものの、次の瞬間、そんな呑気なことは言ってられなくなった。