第1章 出会い
なんでだろう。
彼……エレンと別れてから、すごく虚しさを感じる。
こう、なんて言うんだろう。
なにか足りないって言うのかな。
すごく、自分が自分じゃないみたいに変な感じがする。
多分、もう二度と会えないと思う。
そんな相手についていつまでも考えていたって無駄に時間を浪費するだけ。
やめよう。
「お母さんただいま。」
「あら、今日は少し遅くないかい?」
母は心配そうに尋ねてくる。
「ちょっと、変な人に絡まれちゃって。」
私が苦笑いで言うとお母さんは顔を歪ませた。
「大丈夫だった? よかった、ちゃんと帰ってきてくれて……。」
「うん、同い年くらいの男の子が助けてくれたんだ。」
「そうなの、今度お礼言いに行かなきゃね。」
お、お礼って……。
確かに、言いに行きたいけど……
「だけど、家知らないんだ。名前は知ってるけど……。」
お母さんはやけに必死だ。
そんなに、私が絡まれてたことが驚くことだったのだろうか。
「またいつか会えた時に、私がお母さんの分もお礼言うよ! 」
「ふふふ、また会えるといいわね。」
お母さんはさっきと一変して、優しく微笑んでいた。
「うん。」
それに答えるように、私もとびっきりの笑顔を見せた。