第1章 目が覚めて。
「え……」
“癒しの力”
幼い頃から聞かされていた言葉がココで再び聞かされるとは思ってもいなかった。
「傷口に手をかざせば、瞬く間にキズが治り、“能力者”がお前の“血”を飲めばー…」
青雉は手の平に小さな氷の塊を出した。
「‼︎」
「…能力が二倍以上、上がる、と言われている。」
「きゃっ⁉︎」
手の平の氷が一気に、青雉の手の平サイズにまで大きくなった。
「な…貴方、何者…」
「俺も“能力者”。…“悪魔の実”のことは知ってる?」
「…は、い。」
“悪魔の実”
それも母から聞いたことがある。
食べると、何らかの能力を持つとか。
(…ちょっと待った、“能力者”ってことは…⁉︎)
真鈴はベットの端まで下がった。
その様子を見た青雉はブフっとふきだした。
「安心しな。俺はあんたの“血”目当てじゃねェから。…まぁ、万が一、そうしたらセンゴクさんにこっぴどく怒られるな」
「そ、そう…」
ホッと胸を撫で下ろした。
「まぁ今のあんたの境遇は、“危険度不明の特殊能力者”ってとこだな。だから牢屋の中にいる。」
「…大体分かりました、教えてくれてありがとうございます…」
「あァ。」
青雉は氷を牢屋の外へ放り投げた。
壁に当たり、粉々になって砕け散った。
「…あの、一つ、願い事聞いてくれますか?」
「内容によるが…」
「私をココから出して欲しいんですが」
「あららら、そりゃあ無理なお願いだねェ。」
「…デスヨネ。」
自分で逃げようにも、足に枷がしているので無理だ。
…逃げられない、と改めて分かり、だんだん恐怖心が真鈴の心に湧いてきた。
(…やだ、なんか怖くなってきた)
「じゃー俺、ちょっと戻るわ。しばらくしたらまた来る。」
青雉が立ち上がり、牢屋の扉へと向かおうとする。
「ちょっ…やだ‼︎」
「おぶェっ⁉︎」
急いで青雉の背中のマントを掴んだが、そのまま青雉が歩いた為、真鈴が引きずられて彼の背中に倒れこんだ。
青雉も前に倒れた。
…顔面から。
「いたた……あ。」
「顔面痛ェ…」
「ご…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい‼︎」