第4章 買い物
…その頃の真鈴はというと。
「すごーい‼︎」
普通に群衆にまぎれてショーを鑑賞していた。
「お姉ちゃん〜‼︎ 見えないよー‼︎」
「!」
後ろから服を、小さな男の子に引っ張られた。
「あぁごめんなさい、目の前隠しちゃってたのね。私の前に来なさい、そしたら見えるから!」
「でもお姉ちゃん、見えるの?」
「大丈夫、見えるから。ほらほら前にきな」
「わーい‼︎ お姉ちゃんありがとう‼︎‼︎」
男の子はにっこり笑って真鈴の前に出た。
「あ、お姉ちゃん‼︎」
「ん?」
「お礼‼︎ しゃがんで‼︎」
「う、うん…?」
真鈴は男の子に言われた通り、その場にしゃがみこんだ。
その時、青雉が真鈴の姿を捉えた。
「どこだー…あ、いた、リンリンちゃ」
ちゅ
男の子が真鈴の唇に軽いキスをした。
「⁉︎」
「へへへ、お礼だよ!」
男の子は照れくさそうに笑っている。
「もう…! 女の子に軽々しくキスしちゃいけません‼︎」
「へへへ…ごめんなさい」
真鈴はそう言って軽く頰を染めた。
…ことの一部始終を見ていた青雉はというと。
(…相手はガキだぞ、なんでこんなモヤモヤするんだ、気持ち悪りぃ…)
「あーー…相当キてんな、俺…」
…一丁前にヤキモチを妬いていた。
(仮にもほぼ今日初めて会った女に、こんなに惚れ込むのか)
「真鈴」
「あ、青雉…って、どうかした…? 何か怒ってる…?」
男の子「あ、青雉⁉︎ 青雉って、かいぐんのおえらいさん、だよね…⁉︎」
男の子は青雉の姿を見るなり、ビビって真鈴の後ろに回りこんだ。
「おい、ガキ。キスすんならこれぐらいしねェと」
青雉はそう言うと真鈴の顎に手をあて、引き上げて唇を合わせた。
「「‼︎⁉︎」」
唇を割り、舌を捻じ込ませる。
「んん…っ‼︎」
真鈴は突然のことに頭が真っ白になっているものの、青雉の舌が口内を暴れまわり、だんだんと息苦しくなってきた。
…途端に唇がそっと離れた。
「…これがオトナのキスだぞ、ガキンチョ。お前もいい女見つけろよ」
ポカーンとしている男の子を置いて、青雉は真鈴を担ぎ上げ、群衆の外へと出ていった。