第1章 小悪魔な天使
「泉、どうした?ボーッとして」
「あぁ。宏太。ううん、なんでもないよ」
クラスで仲の良い藪宏太が声をかけてくる。そのまましばし談笑すると、担任が入ってきたので、宏太は席に戻り、私達は退屈な授業をスタートするのだった。
授業中、何故か涼介の事で頭がいっぱいだ。
今朝の事を思い出し、顔が火照る。そして、あの快感も思い出されてしまう。
あそこまでしてきたのは初めてだったな、とふと思う。何かあったのだろうか?
「山田!おい!」
「はいっ!元気です!」
「いや、それは聞いてねぇ。とりあえず教科書の続きを読め」
「えーっと…むかしむかし、至るところにおじいさんとおばあさんがいました」
「今は英語の授業だよっ!!!」
完全に意識が涼介に行ってしまっていた。
恙無く英語の教科書の続きを読み終え、窓の外を見る。
昼休み、私は仲のいい女友達と昼食にとりかかろうとしていた…の、だが。
「べ、弁当忘れた……」
「ドンマイ」
「冷たいですねっ!!」
そんな時、グッドタイミングで涼介が私の教室まできた。やはり美少年はどこに行っても注目されるらしい。
「泉姉さん、お弁当忘れてたでしょ」
「おおう!!愛しのおべんとっ…じゃなくて涼介ー!!」
「なにか言いかけたよね!?」
ガバッと涼介に抱きつく。すると涼介は嬉しそうに目を細めながら、人前だというのに嫌がらず、「はいはい」と言うだけだ。
昼食を食べ終え、また授業だ。
すると、前の席の宏太からメモが回ってきた。
「今日一緒に帰らない?」
私はたまにはいいか、とOKの返事をしようとしたが、そういえば放課後涼介と待ち合わせをしている事を思い出し、「ごめん、弟と約束してるから」と返事。すると宏太は振り向いて「ブラコン」と囁いた。
「まぁね」と開き直って言ってやる。