第1章 小悪魔な天使
私と涼介は同じ高校に通っている。私は三年、涼介は一年だ。
涼介は学校でとても人気があるらしく、女の子からも男の子からも挨拶をされていた。
実を言うと、涼介と私は血が繋がっていない。
私が八歳の時に母親が再婚し、涼介は義理の弟となったのだ。
ちなみに…だが、私は初めて涼介と出会ってから、涼介の事が好きだったりする。
しかし、義理とは言え、姉弟。しっかり分別を持って接しなければ、と私は姉としての役目を果たしたきたつもりだが、涼介は成長するにつれ、朝のように私にいたずらをしてくるのである。
「泉姉さん?」
「えっ!あ、なに?」
「ボーッとしてどうしたの?」
涼介が顔を覗き込んでくる。
あぁくそっ!!可愛いなもぉぉぉぉ!!!!
「なんでもないなんでもない!さ、今日もお互い頑張ろうね」
「うん!あ、泉姉さん。今日、放課後そっちまで行くから待っててね!」
「ん、分かったー」
手を振って、お互い別々の教室に向かう。
「涼介君おはよっ!」
早速クラスの女子が涼介に声をかける。
涼介はにこやかにそれに応じた。
「今日もお姉さんと登校?仲良いよねー」
「まぁね」
「おはよー、涼介」
「おはよ」
「なー、お前の姉さんって彼氏いんの?」
クラスメイトの男子の発言に一瞬眉をピクッとさせ、涼介は努めてにこにこと明るく「いないよ、どうして?」と尋ねた。
「いやー、お前の姉さん美人だからさ。俺ちょっと憧れてて。取り持ってくれよー」
「…ね、ちょっと来てくれる?」
涼介は男子を廊下まで呼び出すと、ドンッと壁に押し付けた。
そして、低く、迫力のある声で、
「俺の泉姉さんに手出したらぶっ殺すから」
と告げた。
そう言い終えると、にこっとまた笑い、教室に戻っていく。
初めて見る涼介の一面に男子は固まったまま、しばらく動けなかった。