第1章 繋がる糸
海燕の手は自分のとは異なり、大きくて骨張っているが、伝わる熱は暖かく、とても優しく感じた。
「…海燕?」
海燕「…もう道暗いし、今日はこうして帰ろうぜ?あ~…あと半年もしたら中央霊術院の入学試験だな…。早いもんだなぁ」
「そうだね……ずっと修行頑張ってるんだもん!二人とも、絶対受かろうね!」
海燕「ま、俺ら結構イケてると思うし、大丈夫だろ?二人とも受かったらお祝いしような!」
「お祝いっ?!楽しみぃ♪そのためにもあと半年、頑張んなきゃ!」
海燕「そうだな!」
繋がれた手に海燕が力を込める。
私の住む家の門が見えてきた時、ふと海燕は歩みを止める。
海燕は前を見て、呟いた。
海燕「…中央霊術院に入ったら…こうして二人で過ごすことはなくなんだよな…」
「海燕……」
私はどこか遠くを見つめる海燕を見上げる。
海燕は私気づき、こちらを向く。
その表情はどこか切な気で少し赤みを帯びていた。
海燕「青蘭っ…俺…、お前のことーーーー」
?「青蘭様ーーーーっ!!」
家の方から坂原がこちらへ向かってきた。
坂原は白鳥家に使える使用人で、私にとっては頼れる叔父さんという感じだ。
「坂原……どうしたの?」
走り寄ってくる坂原に声をかけると彼はふわりと笑った。
坂原「お帰りが遅かったので…心配しておりました。既に夕食の準備は整っておりますよ?」
「うん…ありがとう♪…でも、少しだけ待っててもらってもいい…?海燕と話があるの。」
坂原はちらりと私と海燕の繋がれた手に視線を寄越すと、わかりましたと言い、先に家へと戻っていった。
私は海燕の方を振り返り、その顔を覗きこむ。
「ごめんね?海燕……話、途中だったね…?」
海燕「……い、いや。何でもねぇよ!気にすんなっ!」
海燕はニカッと笑い、私の髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
「きゃっ!もうっ海燕~~~!!」
海燕「……じゃ、また…明後日な?」
海燕は少しだけ寂しそうに笑っていた。
私はそんな彼に抱きつくと笑顔を向ける。
「今日もありがとう!…明後日も楽しみにしてるわ♪」
私の言葉に海燕は私を強く抱き締め返す。
苦しさに私がもがいていると額に柔らかな熱があたった。