第1章 繋がる糸
「海燕……?」
見上げると太陽みたいな笑顔の彼がいた。
私の大好きな笑顔。
海燕「…おやすみ。 青蘭!」
海燕はもう一度ぎゅーっと私を抱き締めると、ぱっと離した。
私も彼に笑顔を向ける。
「おやすみ!海燕っ♪」
海燕に手を振り家へと向かう。
振り返ると、まだ私を見送る海燕はいつもの笑顔のままだった。
私はもう一度、笑顔で海燕に手を振り、家の門を潜った。
海燕「……好きだ。青蘭……」
海燕の呟いた言葉は私に届くことなく、夜の戸張へと消えていった。
帰り道、海燕は自らの唇に手をあて、愛しい人の熱を思い出していた。
ーーーー白鳥家ーーーー
家に入ると坂原が寄りかかっていた壁から身体を離し、私に向き合った。
坂原「…お帰りなさいませ。青蘭様。」
坂原の柔らかい笑顔に私も笑顔になった。
「ただいま!…お腹空いちゃった。…すぐ食べれる?」
坂原「もちろんでございます。参りましょう。」
坂原は私の腰に手を触れ、先を促した。
その柔らかな物腰に大人らしさを感じる。
坂原はとても端正な顔立ちをしており、背も高く、紳士的な男性だ。
そして、私の父への忠誠心は果てしなく、亡き今もそれは継続していた。
そのため坂原は私のことを自分の子どものように大切にしてくれている。
「……いつも、ありがとう。坂原…。」
坂原は少し目を見開くと、ふわりと笑った。
坂原「ありがとうは……私の台詞ですよ。青蘭様。」
そう言うと坂原はしゃがみこみ、私の手の甲にキスを落とす。
坂原「…私を貴女様のお近くに居させて下さり、ありがとうございます。きっと、青蘭様は、素晴らしい死神としてご活躍されることと思いますが……時々…ほんの気が向いたら時で構いません……お顔を見せに来ていただけませんか?」
坂原は俯いたまま、呟いた。
私は坂原の頬に手をあてると笑顔を向ける。
「…当たり前じゃない。ここは、私の家よ?…そうでしょう?」
坂原は顔を上げ、少し寂しそうな笑顔を向けた。
坂原「左様でございますね。…失礼致しました。……貴女様が……私の主である、これ以上の幸せはございません。」
「ふふっ私も貴方が傍に居てくれて嬉しいわ」